東京、品川の御殿山にある原美術館に増築された鉄骨2階建てのキュレーターオフィスである。
美術館は、昭和初期に建築家 渡辺仁によって設計された原家の屋敷を、改装・増築を加えたものである。今回増築した新しい棟は、既存の美術館と様々な意味において、共存・融合するための手法が用いられている。
この棟は、隣接する蔵と倉庫という、2つの既存建物の軸線によって規定されている。建物本体は、西側の倉庫部分に平行に配置され、中庭側の軒部分および北側の壁面が、蔵の壁面を延長した線まで延ばされている。この中庭側の三角形の軒部分には、将来計画としてメッシュ・スクリーンが張られることが想定されており、蔵の壁面から連続する面を作り出し、拡張された中庭の輪郭を構成する。また、このスクリーンは、中庭でのイベントに対応しての映像のプロジェクションや、美術作品の展示用スクリーンなどとして機能することが考えられている。
建物の1階部分は主に事務機能が収容され、2階にキュレーター用のスペースが設けられている。7.2m角の基本ブロックの中に、それぞれの執務スペースが収容され、隣接する部分に階段室・便所・会議室といった付帯の施設が収められている。外壁の仕上げは、この7.2m角の基本ブロックにあたる部分に、金属製の折板が用いられ、北側の押出成型セメント板を使った壁と、基本ブロックの間はガラスで埋められている。また、金属の折板屋根を用いるなど、ローコスト化及び工期短縮の手法・素材が選択された。同時にあえて仕上げに既存の建物とは異なった材料を用いたのは、この美術館は幾度も増築を繰り返しており、それら増築部分が各々の建築時の時代背景を物語る表現をとってきたという、歴史的文脈による。