現代美術専門の個人美術館として東京で活動を続ける原美術館は、実業家の原邦造氏の邸宅として1938年に渡辺仁により設計された建物を1979年に美術館として改装、開館されたものである。
その後、新たに1984年から1988年にかけて磯崎新アトリエ時代に担当したカフェやホール等が増築されたが、今回、新たに我々に依頼された計画は、美術館の内外装の改修工事、および前庭・中庭・駐車場のランドスケーピングであった。
改修の概要は、特注タイル製作による外壁補修とスチールサッシの交換、ミュージアムショップの全面改装、展示室内部仕上げの全般的補修など、かなり大規模なものであった。
外観は、渡辺仁による建築のオリジナリティーを優先させながらのリニューアルを行った。
しかし、内部空間は来館者への利便性の向上を図ることを目的として、様々な変更を加えて改装された。具体的には、ミュージアムショップの拡張、廊下・展示室の改修、身障者対応型便所・ロッカールームの拡張整備などである。
前庭とアプローチ部分のランドスケープは、昼と夜で雰囲気の異なる空間となるよう考慮し、植栽と照明の計画を行った。カフェとミュージアムショップに挟まれた中庭は、今回の改修により北側隣地境界線まで拡張され、設備や外部の演出照明を整備し直すことで彫刻広場として、また、各種のパフォーマンスに対応できるような、よりイベント性の高い空間として再編成された。