ベトナム政府が公募した二段階選定方式による国会議事堂の国際設計競技案である。
700席の国会議事堂・3000人収容の大会議場・バンケットホールの主要施設のほか、国民会議・民族協議会などの行政オフィスがプログラムとして求められた。
高床式の小屋のもとに人々が自由に集い、政治に参加したという「ホー・チ・ミンの家」はベトナム政治の原風景といえる。当案はこれを21世紀に相応しい形で表現することを目指している。
この建物は、広場へ繋がるスロープを持つ基壇の上に、行政諸室が収められた150m四方のボリュームが空中に持ち上げられており、その間は高さ9mのピロティとなっている。ガラスの外皮をもつ3つの主要施設は基壇から立ち上がり、ピロティを貫いている。
行政諸室は設備が収められたハニカムコアスラブ構造により支持されており、フレキシブルなオフィスレイアウトが可能となっている。また、この建物には大小のヴォイドが多数設けられており、主要施設の可動式ガラスルーバーと併せて、気候に応じたエコロジカルな空調システムが可能である。
主要なアクティビティーは人々が自由に行き来出来るピロティにすべて開かれている。また、建物は周囲の緑に埋没しており、象徴的なファサードを有していない。これは、従来の国会議事堂のもつ権威性とは対極の透明性を、新しいベトナム国家の象徴の基本としたからである。