スペインはバスク地方、ビルバオ市で都市再開発の一環として計画された、公共広場、集合住宅及び商業施設の複合施設である。
かつては鉄鋼業など重工業地帯として栄えたこの地も、歴史の変遷の中で、金融、商業の街へと変貌してきた。当時は運河として機能していたビルバオ川の左岸では、ビルバオ市主導により建築家を起用した再開発が進行中であり、既にアメリカの著名な建築家F・ゲーリーによるグッゲンハイム美術館、スペインのF・ソリアーノとD・パラシオスによるコンベンションセンターが完成、その中間にはC・ペリによるオフィスビルが計画されている。
本計画の敷地もこの地区に属しており、20世紀前半に建設された保税倉庫があった場所である。ここでは、1990年代に倉庫のファサードのみを保存して、内部をオフィスビルへ再生する計画が実施されていたが、工事半ばにして計画は頓挫していた。
計画の概要は、倉庫のファサードと前工事で既に完成していた地下構造体を残し、他の部分は解体して、新たに公共広場・商業施設・集合住宅として整備・再開発を行う、というものである。
市の中心であるモユア広場から敷地に至る道路に沿って軸が設定され、その軸線上に中心街から川岸へと至る扇型の平面をした階段状の広場が設けられる。軸に対して対称位置に高さ82mのガラスで覆われた高層住宅棟が2棟建てられ、それらが街へのゲート“門”を形成する。
高層住宅棟に連なる形で、石・煉瓦・ガラスといったブロックごとに3つの異なる外壁素材を用いた低層集合住宅棟が屏風状に配置される。この低層棟が形成するパティオと、川岸のプロムナードが連続的につながるように、川側既存ファサードは中央部を残して取り除かれる。残されたファサードの背後には、地下に展開する商業施設部分へのメインエントランスとなる、ガラスによる3次元曲面で覆われた空間が附加される。