由布院駅舎

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設計期間 1989年1月-1989年12月
施工期間 1990年2月-1990年12月
延床面積 373m2
施主 湯布院町/ JR九州
建築設計 磯崎新アトリエ
構造設計 川口衛構造設計事務所
設備設計 環境エンジニアリング
照明設計 TLヤマギワ研究所

PHOTO CREDIT: Kouji Okamoto/ Shinkenchiku-Sha

久大線由布院駅は大分市より内陸へ約50kmの地にあり、温泉地湯布院町の表玄関として由布岳を正面に望む位置にある。古くから別府温泉の奥座敷として栄え、近年は温泉地にありがちな観光俗化を排した独特の観光地づくりを続け、年間300万人もの観光客が訪れている。その一環で、老朽化した駅の改築がJR九州と町の合同事業として計画された。計画のガイドラインとして求められたものは、単なる通過点としての駅ではなく、情報発信の文化的施設を伴いかつ、湯布院のシンボルとしての駅舎であった。

建物は由布岳と商店街を結ぶ軸線上にコンコースを、それを挟むように駅事務室、待合室(イベントホール)、さらにエントランス側に回廊を配している。

コンコースは、一辺9mのキューブの上に集成材によるクロスヴォールトの屋根が架けられた形をとり、空間的な豊かさが考慮された、シンプルなヴォリュームだけが感じられる空間がつくられた。ハイサイドライト、温泉利用の床暖房、改札ラッチのない出入り口、専用台に表示される時刻表・運賃表、ポスターに代わるLED表示といったような、従来の駅のイメージを脱したこの空間は、小規模な音楽会が開かれるなど、コンコースとしての用途以外にも用いられている。

駅事務室と待合室は弓形の集成材とテンションバーの組み合わせによる屋根の構成でオープンな空間となった。トップライトを設けた待合室は、白一色の壁面と、取り外し可能な壁パネルにより、展示室・イベントホールとしても利用されている。駅という機能がもち合わせる“待ち時間”という独特なものを、最大限に活用できるように考慮した設計となっている。

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