北九州市立美術館の増築計画である。
この美術館アネックスは、昭和49年に開館した本館に対しての、「地元作家の作品を常設展示できるスペースを」という声に答えるものとして計画された。建物は本館の東側斜面に配置され、1階部分に市民ギャラリー、2階には収蔵庫、3階にアトリウム、版画展示室、テラスという3層の構成になっている。
1階の市民ギャラリーは、3つの部屋に仕切られた展示室を持ち、多様な展示形態に対応できるよう配慮されている。このギャラリーは直接外部からアプローチできるようになっており、独立した運営が可能になっている。
3階レベルは半戸外的な回廊で本館と接続される。回廊を渡ると、まず4本のクロスヴォールト天井に囲まれ、天空光の差し込む中庭を持つアトリウムにでる。コンクリート打放し、トラバーチン鋸引き仕上げという粗なテクスチャーで構成されているが、トップライトからの光とそれを受ける水面によって、やわらかい落ち着いた空間に仕立てられている。アトリウムからエレベーターホールを通って至る版画展示室は、四隅が入隅の壁で固められた四角い部屋である。古典的ギャラリーの形態を採用している一方、人工照明によって、天空から採光されたような効果を生み出してもいる。一番奥のテラスは、3方を高さ4.8mのコンクリート壁に囲まれたオープンスペースで、彫刻の展示やミニコンサートに対応している。
外部仕上げは、異なる3種類のデザイン要素から構成されている。打放しコンクリートによるルスティケーション(粗石積み)的な表現の基壇。その上部に重厚性を持った煉瓦タイルと大理石の壁面。そして平滑なアルミパネルのヴォールト状の屋根である。