東京都台東区にある創建1150年の歴史を持つ小野照崎神社の社務所である。
敷地は小野照崎神社境内で、境内には、本殿、神楽殿の他、国の重要有形民俗文化財の指定を受けている富士塚が築造されており、緑に囲まれた歴史を感じる静寂な環境である。
建物は、社務所としての機能と宮司の住まいとしての機能が求められた。二つの機能を持ち合わせた建物を計画する一方、我々は、ここに保存と再生のテーマを掲げた。それは、既存社務所に設けられていた大広間の実測に基づく復元と、そこに用いられていた床柱、欄間等造作材や外部に用いられていた蛙又等を再利用することである。社務所として長く地域の人々や氏子達に親しまれてきた建物、空間を新しい建物の中で再生・保存していくことで、人々の記憶を継承していくことを考えた。
空間構成は、社務所ゾーンと宮司の住居ゾーンの二つに分けられ、1階に大広間、神札所、参拝者控室、事務室、配膳室等の社務所機能を集約し、2,3階は休憩所、食堂、厨房、客殿、宮司室等の住居部分で構成されている。
外部空間は、落ち着きのある色合い、材料を選択することで、隣接する本殿や境内等の周辺環境との調和を考えた。また、大玄関、神札所には、既存社務所に用いられていた蛙又がアクセントとして設置され、日々訪れる人々を迎えている。