南方熊楠顕彰館

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設計期間 2003年12月-2004年7月
施工期間 2004年10月-2005年7月
延床面積 733.04m2
施主 田辺市
建築設計 インテグレーティッド・デザイン・アソシエイツ
堀アーキテクツ
構造設計 山崎亨構造設計事務所
設備設計 環境エンジニアリング
照明設計 Lighting M
掲載誌 GA JAPAN 2006 07
受賞 設計競技 最優秀賞
木の国・Wood Design コンテスト 2006 最優秀賞

PHOTO CREDIT: I.D.A.

和歌山出身の世界的博物学者である南方熊楠の研究資料を保存し、その偉業を研究・発信する施設であり、2003年に行われた設計競技で最優秀賞を獲得した作品である。

南方邸と顕彰館を一体と捉え、邸そのものが顕彰館の収蔵展示物となるように配置し、邸に向かって開いた計画とした。 館内は、玄関ホールを軸として〈静的な空間〉である閲覧室や研究作業室と、〈動的な空間〉である展示コーナーや学習室を、視覚的一体感を損なわず、レベル差から適度に区切れるよう配置し、来館者にとってわかりやすく、また、館内のどこからでも邸を感じるように配慮した。内部は、高さの異なる、連続する切妻屋根により、様々な空間が作り出され、これらは、林立する柱と、格子状の構造体を透過する光で満ち、熊楠の思索の場である熊野の森の大気を館内に呼び起こしている。

この施設は、使用を義務づけられていた紀州産材を、構造材・仕上げ材に用い、大屋根の桁、登梁にも集成材を使わず、スティールのテンション材・耐風梁を併用し、木の美しさを強調したハイブリッドな構成とした。 木構造の耐力壁となる部分は、閉鎖的になりがちな一般的な工法を避け、日本に古くからある“貫壁”の貫を壁の中に塗りこめずに用い、格子状の耐力壁を構成し、内部空間と外部空間の視覚的連続性を確保すると共に、失われつつある伝統工法を新しい表現として伝承している。

屋根は道路側に行くに従い低く抑えられ、道との境界には白い漆喰の土塀が巡り、周囲の屋敷町の景色に溶け込んでいる。 熊楠が生物や環境の在り方を思索したように、我々はこの建築の発想において、建築の建ち方の根源的なものを模索している。

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