博物館は、「展示館」と呼ばれる町の中心に位置する建物と、街外れのかつてのおんば堂基壇に隣接して建設された、「遙望館」とに、分けて配置された。これは、宿坊・えんま堂・布橋といった、二つの施設間に点在する遺物を巡ることによって、信仰の世界を立体的に浮かび上がらせようというねらいによるものである。いわば、芦峅寺の町全体が博物館となるように計画されている。
「展示館」は立山博物館の中枢施設であると同時に、町全体を博物館と考えた場合の、メインゲートの役割を担っている。
1階はエントランスホール、可動間仕切りよって分節される企画展示室・ガイダンスホール、事務室からなり、2,3階は常設展示室となっている。来館者は、まず中央階段で3階まで上がり、立山信仰に関する展示を、外周に沿って螺旋状に設置された階段を下降しながら巡っていくという、一方通行の動線になっている。この内部動線が、内外ともに建築の形態に大きな影響を与えている。
中央階段を含んだ、頂部にトップライトをもつピラミッド状の中心部と、その頂部からスパイラル状に巻きつく空間から建物全体が構成され、2階部分では「立山曼荼羅」をイメージした開口を持つアルミキューブの休憩室が、スパイラル状の外周壁に食込むかたちで付加されている。仕上げは、内壁が白漆喰と和紙、外部は屋根のピラミッド部が玄昌石葺き、スパイラル部がジンク葺き、外壁はいぶし瓦風煉瓦タイル積み、一部べんがら漆喰塗りといった日本的な素材を使い、芦峅寺の風土、環境に調和させている。