富山県立立山博物館 遙望館

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設計期間 1989年3月-1989年9月
施工期間 1990年3月-1991年6月
延床面積 664m2
施主 富山県
建築設計 磯崎新アトリエ
協力事務所 創建築事務所
構造設計 川口衛構造設計事務所
設備設計 中部設計
照明設計 TLヤマギワ研究所
音響設計 唐沢誠建築音響設計事務所

PHOTO CREDIT: Yasuhiro Ishimoto/ Shinkenchiku-Sha

街全体を博物館と考えるこの計画の中で、「遙望館」は、体験型映像ホールの役割を担っている。敷地は、当時立山への入山を禁じられていた女性たちが、ここでの法会に参加することで即身成仏・浄土往生ができると信じられていた、おんば堂があった場所である。展示館を一巡した来館者は、かつて女人たちが歩いたのと同じ道をたどり、布橋を渡り、墓地を通り抜けて、この遙望館に至り、その昔おんば堂で行われていた布橋灌頂会を、3面マルチの大型映像と最新の音響装置によって疑似体験することができる。

建物は周囲の環境に対する配慮から、映像ホールという機能から要求される大きなヴォリュームを確保しつつ、外観をこぢんまりとした印象にすることが求められた。さらに、積雪3mの豪雪に耐えうる必要もあり、これらの条件に対する解決策として、両端部に機械室等遮音性能を要する諸室をRC造の構造コアとして設け、その上に米松集成材による全長36mの竜骨と90cmピッチの登り梁を組み合わせた大架構を架けることにより生み出される、船底を伏せたような形状の大屋根が採用された。

外部は展示館同様、屋根は玄昌石葺き、壁はいぶし瓦風煉瓦タイル積みで、全体は黒を基調に仕上げ、周囲の自然景観に溶け込ませると同時に、その存在をも明確にしている。一部アクセントとして、地域のエントランス回りにべんがら色の漆喰が用いられている。内部は軸組、壁面、床材など木を主材料にしており、特にホール内の船底天井は構造材をそのまま仕上げ材として表している。映像ホールの中央には椅子に代わり、36畳のたたみが客席として設けられており、かつての御堂の雰囲気を彷彿させると同時に、地域の様々な催しにも対応できるよう配慮されている。

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