美術系大学である東京造形大学の新キャンパス建設工事である。
1986年の指名形式の設計競技で我々の案が選ばれ、それから7年の歳月を経て完成をみた本施設は、おおむねコンペ時のコンセプトを踏襲している。そのコンセプトとは、自然景観を可能な限り生かすため、施設を徹底して分散配置し、緑と丘の襞に埋め込むというものである。キャンパス施設は、大きく「中軸施設群」、「スタジオ群」、「アトリエ群」の3つのグループに分けられる。
「中軸施設群」は、事務系諸室・研究室・講義室・図書館など、キャンパスの中心となる施設が集められている。本部棟は橋の建築で、大きなアーチはこのキャンパス全体の門となっている。この施設群の屋上はプラットフォームとして相互に接続されている。アクセス軸正面には、故・白井晟一氏設計による美術館が配置され、その記念性を強調している。
「スタジオ群」は、ワークステーション・デザイン系スタジオ・学生食堂などの創作活動の拠点施設群である。ワークステーションはガラスブロックが主として使われている建物で、中心に天井の高い多目的空間を持ち、屋内でのさまざまなアクティビティに対応することが可能である。デザイン系スタジオは丘陵のカーブに呼応する、うねったプランと透明ガラスのファサードが特徴的である。ここではスタジオという機能から、自由なプランに変更できるよう、間仕切り壁を主構造と切り離し、設備配管を露出させた仕上げとした。円形の学生食堂はキャンパスのほぼ中心に位置し、張弦梁構造の屋根が特徴的である。
「アトリエ群」は、絵画棟と彫刻棟に分かれ、北に向かってのびる尾根筋に沿った西側に配置されている。ともに北側採光が必要とされるので、同じ断面構成をした平屋の棟を連続させている。